Cat is god vol.1
預かり猫T君の話
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接待猫

5

友達が家に泊まりに来た。

玄関へ走り出て迎えるT君は"雌豹めひょうのポーズ"(牡ですが)で臨戦態勢。
臨戦態勢とは言っても、人に向けているのは頭ではなくお尻。要は、猫得意の「尻をなでろ(叩け)」というアピールです。翻訳すると「こんちわーお尻どうぞ」。
人の顔すら確認せず、スッと尻を差し出すのです。

猫を飼ったことのない友人は「なにこれ...どうしてあげたらいいの...」と途方に暮れていた。
私は「しっぽの付け根のところを手のひらでポンポン叩いてあげて」と伝えた。
さも当たり前のように言われたその指示にさらに混沌とする友人。
お手本を示しても「あ、はい...」みたいな感じでリアクションが悪い。
その間もT君はずっと我慢強く尻を上げていた。

高校生活から解放された私たちは、わいわいキャーキャーと楽しく過ごしていた。
部屋に様子を見に来たT君、友人たちも随分T君に慣れて名前を呼んだり(呼べばすぐ来る)、お尻をトントンしたりして上手に触れ合っていた。

話がどんどん盛り上がり、テンションがMAXになった友人が妙な動きでT君をからかい始めた。なんていうんだろう...葉っぱ隊みたいな、手足を広げて左右にカタカタ動く感じ。
カタカタ カタカタ
生まれて初めて見た「人間らしくない動き」に緊張したT君は、ベッドの下に潜り込み目を丸くしていた。それでも友人の「人間っぽくない動き」は続けられ、ベッドの下のT君ににじり寄る。
T君は(多分初めて人間に対して)全力の「シャー!」をした。

「T君のシャー、初めて見た...。」と驚く私に、友人もようやく我に返り、人間らしさを取り戻して「あ...なんかごめん...」と言った。
T君はベッドの下でしばらく目を丸くしていた。

人間が未知の生き物であることを知ったT君は、ほんの少し慎重になる。と思ったけれどそんなことはなくて、相変わらず初対面の人間に対して我慢強く尻を上げ続けていた。

後日談ですが、留守中にペットシッターさんを頼んだ時も、例にもれずお尻を上げて接待していたそうです。
自分の縄張りに、しかも家族の留守中に、知らない人が突然入ってきても全然平気っていうすごい豪胆な猫...。