Cat is god vol.1
預かり猫T君の話
↓

外が怖い室内猫

6

一戸建て時代の幼い頃、庭に出て他所の猫にこっ酷くやられた経験があるT君。
そのせいか、家の中ではあんなにイキイキしているのに、一歩でも外に出ると漬物石のようになってしまう。

一度、リードをつけて外を散歩しようとした時も全然駄目で、ずーっと地面に蹲っていた。芝生があるところだと喜ぶかな?と抱っこして連れ歩くも全然駄目。
リードがどうこうではなく、もう「外」ってことに緊張してしまうらしい。空気も音も全然違うもんね。
仕様がないので行きと同じように抱っこして帰った。

そんなT君でも積極的に出て行きたがる「外」が、ベランダ。
当時の我が家は4階建の3階。中途半端な高さで落ちたりしたら危険ということで、滅多に出してあげなかった。
ベランダ掃除をした天気のいい日などはベランダをT君に解放する。人間は付きっ切りで見守る。
当時の我が家のベランダは、正方形に広いエリア(3畳くらいあった)があり、T君はそこで気持ち良さそうに背中でズリ回る。アホになっている、とも言う。
がっちり囲われた手すり(柵ではなく壁のような腰高の手すり)の隙間から顔をポコっと出して外を見たりもしている。
屋外にトラウマのあるT君は決して下に降りようとはしないので安心だった。
暖かくて気持ちいいのか、ベランダではとにかくご機嫌。

不意に、ヒョイっと手すりに乗り上げるモーションを見せるT君。見守っていた私は「アッ!」と硬直。
手すりの上部は、冬場に積もった雪を敷地の外に落とすため、外側に向かって少し傾いているのです。しかもステンレス製。

息を飲み見守る(大きな声を出すとビックリしてバランスを崩すかもしれないと思って咄嗟に黙った)私をよそに、シュッとした顔で手摺の上に佇むT君。ちょっと手を舐めたりして寛いでいる。

猫の体幹と肉球の万能さを舐めていた。
でももうあんなヒヤッとする思いは嫌なので、T君にはクドクドと「恐ろしいから手摺に乗ってはならない」と説いた。そりゃもうクドクドと...。

おかげで(と、信じている)T君は手摺には登らなくなった。
ベランダに出た後は砂埃でジャミジャミになった身体を洗われる、という法則性に気づいたせいか、そもそもベランダに出たい、とあまり言わなくなった。(例に漏れずT君もお風呂が大嫌い。)

それでもたまに冒険心がくすぶると、玄関が開いた隙に、団地の内階段をワーっと(なぜか決まって上階に)駆け上がり、行き止まりの最上階でシュッと座って凛々しい顔をしていたりする。
抱っこで回収されるくせに。